理由は2つあります。一つは、近年の出版費、発送費、人件費等の高騰及び消費税の引き上げという経済的条件の変化です。もう一つは、ボランティアに頼っている編集業務の負担です。ご承知の通り、これまでも刊行が遅れ皆様にご迷惑をおかけしています。その原因の一つは大学業務の傍らボランティアで編集を行っていることにあります。多忙な時期にはあっという間に数週間が過ぎ刊行が遅れ、春や夏の少し休暇の取れる時期に何とか遅れを取り戻すといったことの繰り返しです。 同時に、誌名を変更し、コンテンツを増やすことは、専門誌としての体裁を整え、さらに執筆者や読者の幅を広げることにもなる、と考えています。弊誌は、1959年に刊行された『日ソ経済調査資料』に始まり、1994年4月に『ロシア・ユーラシア経済調査資料』、2007年1月に『ロシア・ユーラシア経済―研究と資料』、2011年1月に『ロシア・ユーラシアの経済と社会』と名称を変更してきました。そして、2020年から『ロシア・ユーラシアの社会』としてリニューアルします。本誌の対象地域は、すでにロシアを中心とする旧ソ連から、中東欧からモンゴル・中国に至る広大なユーラシア地域全体へと広がり、対象領域も、経済、政治、法律、国際関係、社会、歴史、教育など社会科学の広範な分野に及びます。経済や政治もまた広義の「社会」の一部であり、こうした視点を明示することは「研究者の営みと市民をつなぐ」ことを理念に掲げるユーラシア研究所の姿勢を示すものでもあります。 記念号を出すことはかないませんでしたが、2019年は創刊60周年の年でもあります。引き続き内容の充実に努める所存です。どうか事情をご拝察の上、引き続きご愛読を賜りますよう、お願い申し上げます。
蓮見 雄
『ロシア・ユーラシアの社会』編集長
本誌は、1959年(昭和34年)創刊し、53年間にわたって定期発行を続けています。地域的には、中央アジア、コーカサス、中東欧諸国など、バルト海から日本海に至るユーラシアの広い範囲を、また分野的には、経済を中心として、政治、法律、社会、歴史その他広社会科学全般を対象とします。
また、国内の論文だけでなく、海外寄稿も掲載しております。
ロシアの渋滞問題とその計喝方法としてのスマート信号システム ザリーナ・アバチェワ 雲 和広
<特集><小特集>コーカサスの音楽
まえがき コーカサスの音楽 特集号刊行にあたり 久岡 加枝
音楽フォークロアにおけるジャンルの変容:『シャミールの祈り』の事例から
Алла Николаевна Соколова(翻訳・訳注:久岡 加枝)
環ポントス圏のレズギンカ Алла Николаевна Соколова(翻訳・訳注:久岡 加枝)
複合様式の事例としてのナウルスカヤのコリャードカ
Алла Николаевна Соколова(翻訳・訳注:久岡 加枝)