Archive for 2011年11月30日

3.多面的なロシアと向き合う-今井雅和

ロシア国旗

ロシアには幾つかの異なる顔がある。ビジネス制度においては新興国、消費市場としては先進国的特徴を備えた中進国、研究開発立地としての特徴は先進国的である。本稿では、このようなビジネス立地としてのロシアの多面性を確認し、同国とどのように向き合うべきかを考える。

1.はじめに

新興大国4カ国がBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)としてグルーピングされて久しい。しかし、当たり前のことであるが、BRICsの4カ国を十把ひとからげにするのは乱暴であるし、新興国市場戦略のヒントも見過ごされてしまう。せいぜい、成長著しい新興大国というのが共通点ではないだろうか。ロシア以外の3カ国は1990年代から徐々に経済的離陸を準備し、21世紀に入り成長を加速させたが、ロシアはミゼラブルな1990年代と実質的な経済破綻を経験した。2008年のリーマンショックの影響を最も受けたのもロシアであり、2009年は7.8%のマイナス成長を記録し、BRICsからの脱落の可能性を指摘する声も聞かれた。特に日本では、両国間に横たわる歴史的、政治的な負の遺産に加えてロシア地域との距離が離れていることもあって、BRICsの中でロシアの影が薄い印象も否めない。

» Read more..

2.EU経済危機とフィンランド-久保広正

フィンランド国旗

4月17日に実施されたフィンランドの総選挙において、欧州懐疑派である「真のフィンランド人」党が第3党に躍進した。同党は選挙期間中、EUによるギリシャ、ポルトガルなどへの金融支援に反対、さらにはEUによる欧州金融安定基金の拡充にも反対している。この結果、各国に対するEUの金融支援策が行き詰まることもあり得る情勢となってきた。

去る4月17日、フィンランドで総選挙が実施され、現与党である中央党は議席数を大きく減らし35議席を獲得するにとどまった(改選前は51議席)。さらに、連立与党を形成する国民連合も44議席(同50議席)へと議席数を減らした。逆に、欧州懐疑派であり、かつ極右政党とされる「真のフィンランド人(True Finns)」党が大幅に議席を増やし、39議席も獲得した(同6議席)。なお、欧州懐疑派とされる社会民主党は議席数を42に減らしたが、微減にとどまっている(同45議席)。その結果、親EUともいえる現政権が議席数を減らす一方、欧州懐疑派が大幅に議席を増やしたことになる。

» Read more..

1.進化する中東欧の自動車産業-細矢浩志

ユーラシア研究所レポート

中東欧の自動車産業は,世界経済・金融危機の影響が懸念されるなか西欧諸国より早く生産回復の兆しをみせるなど,欧州自動車生産システムの不可欠な環に成長した。
近年は,研究開発機能の拡充や新興国市場攻略拠点化が進展している。大手メーカーのグローバル戦略展開の要を占める中東欧は,今後も発展する蓋然性がきわめて大きいといえよう。

1.はじめに

中東欧では1990年代以降,欧米先進諸国からのFDIによって経済・産業構造の抜本的な再編が進展した。有力外資による製造拠点構築は中東欧を欧州有数の自動車生産基地に変貌させた。中東欧自動車産業は世界の大手自動車メーカーの生産分業体制の一翼を担う有力な製造拠点として整備され,その生産分業ネットワークに組み込まれることによって発展してきたのである )。リーマン・ショック後の世界経済・金融危機により深刻な不振に陥った欧州の自動車産業は,EU・主要国の自動車産業支援策の恩恵により窮状を脱したかに見えたが,現在,欧州では周辺諸国(PIIGS)の財政赤字拡大に起因する信用不安が広がり再び緊張が高まっている。いま中東欧自動車産業で何が起きているのだろうか?注目すべき動向を若干指摘してみたい。

» Read more..

Back to Top ↑