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112.EU著作権法指令改正成立―大激戦終了-レンツK・F

EU

概要


世界的に注目された闘いが終了した。ドイツでは、欧州連合(EU)著作権法指令改正に反対した側が連日、大規模なデモ集会を行いマスコミも大いに注目した。最大の争点となったのは、指令案11条(新たな権利制定)と13条(自動的著作権侵害阻止)であったが、最終的に両条とも反対を押し切って成立。反対派を集結したドイツ海賊党のReda議員の完全敗北で終った。
2019年4月15日、欧州連合(EU)の閣僚理事会は本件改正の議会決議を承認して、反対派の最後の望みが打ち砕かれた。閣僚理事会で65%以上の支持が必要であるところ、支持率は71%を超えた。反対票を投じたのはイタリア、スウェーデン、オランダ、ポーランド、フィンランドとルクセンブルクであったが、反対派は成立を阻止するために必要な票を確保できない結果となった1)

1. 11条関係

本件改正は、2001年に制定された指令を対象とした。当該指令は、情報化社会における著作権の再検討を課題にした。インターネットは社会・経済のどの側面においても極めて重要であるが、インターネットに関連する法律を考える際、重要なのは著作権についての検討となる。今回の改正については各国の一般国民も大いに注目したが、反対派は特に改正案11条と13条を問題視した。その順番に今回成立した改正の内容を紹介して、多少の検討を加えることにする。

11条として今回成立した最終案は、既に公開されている2)。新たな権利を認める内容ではない。単に従来から著作権が認められている著作物の権利行使のために、新たな主体を加える改正である。
当該主体は、出版社である。記者が記事を書いた後に、当該出版社が当該記事を印刷物として販売するのと並行してインターネットでも公開することは一般的である。その場合、第三者は無料で記事を閲覧することができる。また、簡単に複製することもできる。当該第三者は当該記者の給料を支払っていないので、記事などから生じる収入を、出版社に所属させる必要がある。

従来から、記事などについては当然に著作権が認められている。出版社Aが記者Bを雇って、記者Bが記事を書いた場合、記者Bは著作権を行使して、第三者の無断複製を禁止する、または複製の許可に代わって金銭を請求することができる。しかし、当該著作権の行使と並行して出版社独自の権利を認めることは、今回の11条の内容である。

反対派は、当該改正を「リンクタックス」(link tax)として批判している。しかし、この批判には問題が残る。租税は、国家に納めるものである。本件改正によって仮に出版社が新たな収入源を確保できたとしても、国家の収入にはならない。さらに、今回の最終文言の1項の最後のところを見ると、以下のように述べている。「上記の権利は、記事の個別の言葉(individual words)および極めて短縮した紹介については成立しない」
当該文言の運用は、今後の加盟国の実施立法およびそれに基づく判例に依存するところが大きいが、単にあるページにリンクすることだけは「短縮した紹介」よりは著作権者の権利の制限が少ないので、記事をリンクの対象とすること自体は、従来通り違法でない。その半面、記事の大部分を再現しながらリンクを貼ることについて、当該記事の権利を不当に侵害する行為として禁止することは適切である。
反対派は「save the Internet」の激論を展開した。今回、EU閣僚理事会で本件権利が成立したため「インターネットが死亡」することが憂慮されているが、反対派も認めている通り、ドイツでは、2013年からこの類の権利が認められていた3)。そのため、ドイツでは11条の実施のために、立法が不要である。既に現行法が指令と同様である限り、加盟国は当然ながら指令を実施する必要はない。
2013年のドイツ国内法を受けて、同国内でインターネットが死んだのか。仮にドイツでインターネットが死んだとしても、世界全体でインターネットが死んだのか。そのようには見えない。従って、本件指令の成立もさほど心配する必要はない。

2. 13条関係

13条は、これからの社会問題の象徴でもあるロボットと人間の対立である。13条の文言の最終案も公開されている4)。この規定はYouTubeなど、他人のビデオ、その他の著作物を発信する業者に適用される。YouTubeの既存の制度で説明すると、以下のような仕組みである。
例えば、映画会社Aが新作映画を作った。その際、当該映画の電子情報が漏洩して「身代金を支払わない限り、明日、YouTubeにビデオを投稿する」と著作権者が脅迫を受けると、困ることになる。そして実際に投稿された場合、著作権者がYouTubeに連絡して当該ビデオの削除を請求できる。YouTubeは著作権を侵害しないよう、当該請求に応じることになる。

しかし著作権者がYouTubeに連絡するためには、映画会社Aは当該著作権侵害を発見する必要がある。しかし、24時間体制で全てのYouTubeビデオを閲覧することはほぼ無理であろう。また、最低限でも、著作権者に連絡してから当該著作権侵害を終了させるまでには時間がかかる。その間に、漏洩した電子情報がインターネット上に拡散する可能性が生じる。
そこで、著作権者があらかじめYouTubeとの協力関係の下、新作映画の情報をYouTubeに提供して、利用者が同様の情報を投稿したい場合、自動的に当該掲載を認めない「Content ID」と称するシステムを整備してきた 5)。当該システムは、著作権者が提供した情報を自動的に投稿情報と比較している。一致する場合、再生を拒否する。

今回の13条は、YouTubeのような仲介業者(platform)に、このような努力をするよう義務を負わせている。YouTubeそれ自体は、既にそのシステムを実施しているので、仮に国内立法で当該義務が新たに導入されたとしても、新たに何らかの行動を起こす必要はない。またYouTubeの利用者の自由も、既に当該システムによって制限されている。

反対派の不信は、ロボットによる判断のところにある。人間ではなく、人工知能(AI)に当該判断を任せては、不当に投稿が制限されるおそれがある、との考えである。確かに、AIと人間の対立は、これから数十年にわたる重大な社会問題となるだろう。AIに最終判断を任せることには疑問が残る、との気持ちも分かる。
しかし、本件文言は8項で、利用者に人間の判断を受ける権利を認めている。仮にAIの判断が間違って、著作権侵害でない案件について投稿が拒否された場合でも、次の日に人間の判断を受けて、当該間違いを是正するための手続きを整備しなければならない。
最悪、YouTubeに投稿できないビデオでも、自分のウェブサイトで発信する権利は制限されていない。確かに、最近はTwitterやYouTubeなどの仲介業者の力が増している。しかし依然として、著作権を侵害しない発言は自分のウェブサイトでいくらでもできる。
将来的には、TwitterやYouTubeなどの仲介業者の影響力を制限するために、分散型ネットワークに戻る必要があるだろう。中間管理の少ないネットワークを目指す考えは、適切といえ、著作権を侵害しない発信が本規定により不当に制限されるとはいえない。

1) Reda議員による2019年4月15日のTwitterでの発言。www.webcitation.org/77fbMlk0T参照
2) Reda議員のウェブサイトでの再現。www.webcitation.org/77fcOo5L3
3) Achtes Gesetz zur Änderung des Urheberrechtsgesetzes vom 7. Mai 2013, BGBl I 1163
4) Reda議員のウェブサイトでの再現。www.webcitation.org/77feEWlBB
5) YouTube, How Content ID works, http://www.webcitation.org/77ff6YmHp

[執筆者]Dr. Karl-Friedrich Lenz(レンツK・F)青山学院大学法務研究科教授)

(※この記事は、三菱UFJ銀行グループが海外の日系企業の駐在員向けに発信しているウェブサイトMUFG BizBuddyに2019年5月16日付で掲載されたものです)

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