Archive for ロシア

ロシア極東開発省のリーダーシップと日本-堀内賢志

ロシア国旗

概要

ロシア極東開発省は、政府主導で大胆な政策を打ち出すことができる反面、「プーチン頼り」という危うさをはらんでいる。日本としても、極東開発協力を本格化するには、より極東地域の現状を考慮した、いわば地元に根差した協力にじっくりと取り組んでいく必要がある。
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ロシアにおけるマーケティングの発展-富山栄子

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概要

ロシア企業の経営戦略は顧客志向に変化し始めており、学術分野においてもマーケティングの研究が着実に進んでいる。これは長期的に見て、マーケティング知識を持ったロシアの人材が供給されていく可能性を高め、ロシアビジネスの改善に貢献することが期待できる。

1.はじめに

本稿では、日本ではほとんど知られていないロシアのマーケティング研究について紹介する。

マーケティングの役割は「顧客の創造」にある。「マネジメントの先駆者」と呼ばれるピーター・ドラッカー(Peter F. Drucker)は、マーケティングの本質的な役割が「顧客をよく知り理解し、製品やサービスが顧客にフィットし、ひとりでに売れてしまうようにすることだ」と述べ、製品やサービスに代金を喜んで支払おうとする顧客の存在こそが事業の土台であると捉えた。現代のマーケティング論の中心は、このような「顧客志向」(customer orientation)や「市場志向」(market orientation)の発想にある。

対照的に、ソ連時代には、顧客を意識した企業戦略や経営活動に関する理解は乏しかった。しかし計画経済体制が崩壊し、市場経済化の進展に伴ってロシア企業もマーケティングの役割を再評価し、新たな競争上の優位を獲得するために顧客志向の経営戦略を追求するようになった。ソ連崩壊後におけるロシア市場への多国籍企業の参入もまた、ロシア企業へのマーケティングの重要性の認識や知識の浸透に際して大きな役割を果たした。
対照的に、ソ連時代には、顧客を意識した企業戦略や経営活動に関する理解は乏しかった。しかし計画経済体制が崩壊し、市場経済化の進展に伴ってロシア企業もマーケティングの役割を再評価し、新たな競争上の優位を獲得するために顧客志向の経営戦略を追求するようになった。ソ連崩壊後におけるロシア市場への多国籍企業の参入もまた、ロシア企業へのマーケティングの重要性の認識や知識の浸透に際して大きな役割を果たした。

筆者は長年にわたってロシアの複数の都市においてマーケティングに関するフィールドワークを行ってきたが、ロシアでも着実にマーケティング活動が浸透していることを実感している。一方で、大きな地域差もある。例えば、2018年4月にウラジオストクにおいて実施した現地の外国車ディーラー(日本企業を含む)への現地調査では、顧客対応やアフターサービスなどにおいて教育が行き届いていた。また2014年9月に行った、サンクトペテルブルクの食品や医薬品のプラスチック容器専門メーカーであり自動車部品メーカーでもあるMir Upakovki1への現地調査でも、顧客志向が徹底され、欧州諸国への販売拡大が確認できた

しかし、2014年9月にロシアの大手自動車メーカー、アフトワズ(AvtoVAZ)の企業城下町・トリヤッチで行った調査では、そこに所在するロシア国営自動車部品メーカーには顧客志向という発想が全くなかった。このように、同じ自動車産業であっても資本形態や活動分野、さらには企業の立地によって、顧客志向の在り方にも違いが生まれている。


1 Mir Upakovkiはサンクトペテルブルクにある食品と医薬品のプラスチック容器専門メーカーであるが、日本から最新のInjection Stretch Blow Moldの成形機を輸入してプラスチックボトルの精度の高いねじの成形なども行い、食品容器製造技術から自動車の機能樹脂部品を生み出し、外資系の1次サプライヤーや自動車OEM(相手先ブランドによる生産)メーカーへも納入している。ユニリーバ、ネスレ、ロレアルなど欧州の外資系企業が顧客であるため、品質管理が徹底されている。食品、医薬品容器を製造するためHACCP(危害要因分析重要管理点)やISO22000(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)など食品安全衛生基準が適用されており、工場内は清潔に維持されていた(Mir Upakovki配布資料および工場見学による)。

2. ロシアにおけるマーケティングの進化

ロシアの学術分野においても、顧客志向に関心を向けたマーケティング研究が進んでいる。モスクワの企業100社を対象とする調査(1997年)に基づいたFarley and Deshpandé[2006]は、顧客志向の高い企業はより良い業績を達成していると示した。しかし、ソ連崩壊直後の時期は「何でも売れる」状況で、ロシア新興経済の企業は販売上の苦労を感じることはなかった。この時代のマーケティングコンセプトは製品志向(product out)であり、自社が提供しやすい製品・サービスを市場に供給していた。顧客のニーズを理解し、またはニーズを生み出すといったような顧客志向のマーケティング戦略を採用する必要性はそれほど大きくなかった。

Smirnova et al.[2011]は、顧客志向のマーケティングの本格的な始まりは、2009年に生じた世界金融危機とその後の景気後退の時期であると主張している。この時期に市場競争がより厳しいものとなったため、企業はマーケティング戦略を見直す必要に迫られた。ロシアの工業企業148社を対象とする調査に基づく彼らの実証分析では、顧客志向のマーケティングを採用する企業の業績がそうではない企業を上回るということが示されている。この結果を踏まえて彼らは、企業の業績改善には顧客志向の戦略を進める必要があり、購買部とマーケティング部の組織的な関係を強化し、バイヤーをはじめとする顧客がどのように考えているかをより深く理解する必要があると主張している。

スミルノワ(Smirnova)の研究グループはさらに、2008年、2010年、2013年の3期間にわたる企業調査結果に基づいて、ロシア企業は全体として顧客志向のメリットを理解し、顧客志向のマーケティング戦略を取るように進化している状況を明らかにした(Smirnova et al. [2017])2。彼らの研究が示すところによると、ロシア企業の顧客志向は(a)顧客中心の戦略と、(b)顧客サービス提供という二つの要素から構成される。前者の(a)顧客中心の戦略とは、経営方針として顧客を重視する姿勢、例えば「顧客満足度をビジネスの目的とする」「顧客のニーズに対応する企業であることにコミットし、顧客志向がどの程度実現されているかモニターする」「顧客にとって価値あるものを創造することを信念として持つ」といった方針を掲げることである。

(b)顧客サービス提供は「顧客満足度を体系的かつ頻繁に測定する」と「アフターサービスに細心の注意を払う」から成る。双方の要素が、企業が市場環境に適応し、利潤を最大化し、自社を発展させるために必要な能力を強化し、企業の業績を改善させることが示された。一方で、ロシア企業の問題点も明らかになった。「顧客中心の戦略」に関して言えば、ロシア企業は全体として顧客志向の重要性を認識してはいるが、全ての企業がそれを経営戦略や目標設定に採用しているわけではない、またはそれを実現する際に困難に直面しているという問題がある。例えば、顧客志向に関係するような重要業績評価指標(Key Performance Indicator:KPI)を導入しているロシア企業はいまだに一部にとどまっている。Smirnova et al.[2017]は、顧客サービスの提供を強化し、顧客志向のKPIを導入することによって、マーケティング戦略や効果を操作する必要があると指摘している。

2 2008年と2010年の調査は、電話・Skype・対面式アンケートによって実施された。2013年の調査はオンラインアンケートである。2008年の調査では39地域419社、2010年において10地域206社、2013年において14地域339社の企業が調査されている。なお、この調査の対象には、極東連邦管区は含まれていない。

まとめ

以上の先行研究から得られる知見を改めて整理すると、次の二つのポイントを指摘できる。
第一に、ソ連解体後のロシアでは時を経るに従いマーケティング志向に変化が生じた。市場経済移行初期においては、国内市場が大きく成長機会に富んでいた新興ロシア経済では、顧客志向への投資が必要とされていなかった。この時代は製品志向をコンセプトとするマーケティングが行われていた。

第二に、2009年の金融危機発生後の景気後退期において、厳しい生存競争の状況に置かれたロシア企業は顧客志向のマーケティング戦略の必要性と有効性を再認識するようになった。ただし、それをKPIの導入などを通して実践的な意味で実行した企業は一部に限られている。しかし、顧客志向のマーケティング戦略がロシア企業の経営上の課題となるのみならず、ロシアの学術分野においてもその研究が進み始めていることは、長期的に見て、現代的なマーケティング知識を持ったロシアの人材を供給し、ロシアのビジネス環境が改善されていく可能性を示している。

参考文献:
John U.Farley and Rohit Deshpandé [2006] “Charting the Evolution of Russian Firms from Soviet ‘Producer Orientation’ to Contemporary ‘Market Orientation’ ” Journal of Global Marketing, Vol. 19, No. 2, pp. 7-26
Maria Smirnova, Stephan C. Henneberg, Bahar Ashnai, Peter Naudé, and Stefanos Mouzas [2011] “Understanding the role of marketing-Purchasing collaboration in industrial markets: The case of Russia,” Industrial Marketing Management, Vol.40, pp. 54-64
Smirnova Maria M., Rebiazina Vera A.and Frösén Johanna [2017] “Customer orientation as a multidimensional construct: Evidence from the Russian markets,” Journal of Business Research, Vol. 86, pp. 457-467
富山栄子[2012]「ロシア市場への現代自動車とトヨタ自動車のアプローチの比較研究」『ERINA REPORT』第106号、pp. 57-64
富山栄子[2014]「自動車メーカーの新興国ロシアへの参入戦略~双龍自動車、マツダ、トヨタ自動車のウラジオストクでのセミノックダウン(SKD)生産による参入を事例として~」『ERINA REPORT』第116号、pp. 57-66
富山栄子「ロシアにおけるマーケティングの発展と現在:ロシア西部と東部の比較研究」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』2018年7月号(No.1030)

[執筆者]富山 栄子(学校法人新潟総合学園事業創造大学院大学 地域・国際担当副学長/教授)

※この記事は、2018年9月18日付けで三菱UFJ銀行グループが海外の日系企業の駐在員向けに発信しているウェブサイトMUFG BizBuddyに掲載されたものです。

ロシアにおける日本製品のプロモーション戦略-西田 裕希

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概要

本稿では、ロシア人に対する日本企業・製品の適切なコミュニケーションの在り方を探る。特に感度の高い都市部の若者層に焦点を絞り、アニメや漫画を楽しむ日本ファンの若者や、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の使い方などの実態を紹介。昨今のロシアの時流と併せて、ナショナリズムの高揚という観点も捉えたアプローチを提言する。
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シベリア鉄道+中欧班列+北極海航路-木村 保彦

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概要

ソ連時代から日本とユーラシア大陸間のコンテナ輸送を担ってきたシベリア鉄道は、中国と欧州を結ぶ中欧班列の台頭、北極海航路の登場といった新たな展開を前に一つの転機を迎えている。本稿ではシベリア鉄道の置かれた現状を把握するとともに、シベリア鉄道の将来像を考察する。

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ロシアを巡る環境変化とブランドマーケティング-菅原信夫

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概要

これまで輸入品と海外ブランドに独占されていた耐久消費財において、ロシアブランドの人気が高まっています。とはいえ、多くの輸入部品が使用され、最終組み立てのみロシアで行う形式的な「Made in Russia」が多く見受けられます。それならば、日本製の部品やユニットの輸出を増やすB2Bビジネスが可能なはずです。これも日本のメーカーにとって一つの輸出戦略といえるのではないでしょうか。
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